2010年2月2日のニュース
1日にスペイン、バレンシアでテストシーズンが始まったが、メディアの最大の注目は7度のワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハだ。彼が今でも最盛期と同じパフォーマンスを発揮できるのかどうか? 彼が駆るメルセデスGPのマシンにタイトル争いに相応しい力が備わっているかどうか? シューマッハの一挙手一投足にカメラのフラッシュが焚かれ、関係者が群がる。それを横目で見るニコ・ロズベルグにルーベンス・バリチェロも助言を与えた。
ロズベルグにとっては本当に厳しいシーズンの始まりかもしれない。
メルセデスGPの新車MGP W01は幸運にも良いスタートを切った。チャンピオンシップ争いができるマシンかどうかを判断するには時期尚早だが、少なくとも初日のペースは悪くなかった。しかし、彼が相手をするのは7度のワールドチャンピオンだ。ロズベルグ自身、ドイツではセバスチャン・ベッテルが台頭するまではシューマッハの後継者と目されていた逸材だ。彼の才能を疑う者はいない。
それでも、注目の度合いでは勝負になっていない。
ロズベルグはドイツのモータースポーツ誌「Auto Motor und Sport」に対して次のように述べている。
「朝の発表会で100台のカメラがミハエルに向けられていたけど、僕には1台だけだったよ。こういったことには慣れると思う。僕はレーシングドライバーだし、僕に向けられるカメラの台数なんて重要ではないからね」
シューマッハはチームに対してカーナンバーの変更を要求して、それが通っている。これは小さな例に過ぎないが、今後シューマッハが数多くの要求をチームに対してしていくことは間違いない。マシン開発をリードするのもロズベルグではなくシューマッハとなるだろう。このように、メルセデスGPが少しずつ「チーム・シューマッハ」と化していっているように見えるのは事実だろう。これが極端に推し進められると、最終的にロズベルグはかつてのシューマッハのチームメイト達と同じ運命を辿ることになるかもしれない。
そして、かつてフェラーリで6年に渡り彼とコンビを組んできたルーベンス・バリチェロは冗談めかして次のような助言をロズベルグにしている。彼はバレンシアで記者からロズベルグに対する助言はないかと質問されるとこう答えた。
「そこから逃げろ。僕に言えるのはそれだけだよ。僕の知識とミハエルが今日どれほど速かったかということをあわせれば、彼にとってはとても厳しい仕事になると思う。でも、彼はワールドチャンピオンになれる才能を持つ青年だから、彼の成功を祈っているよ」
ロズベルグがシューマッハの陰に隠れない為には、開幕戦バーレーンからシューマッハを上回るパフォーマンスが必要になってくるだろう。
(記事:
nien)
開幕戦を翌月に控え、ようやくF1ファン待望のテストシーズンがやってきた。1日、晴れ渡る空の下、スペイン、バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットには7チームが集結。彼らは揃って新車を用意し、今年初の合同テストが始まった。最大の注目は各車のタイム比較だが、7度のワールドチャンピオン、ミハエル・シューマッハの復帰後初の本格走行や小林可夢偉の加入したザウバーの新車C29の出来も気になるところだ。一日を終えて最速ラップを記録したのはフェラーリF10を駆るフェリペ・マッサ。負傷の影響を微塵も感じさせない素晴らしい走りで彼もまた復帰を果たした。
今週のバレンシアでのテストは3日間予定されており、1日から3日まで行われる。翌週には各チームはスペインのヘレスに移動し、今オフ2回目の合同テストに臨む。
この日の気温は12℃、まずまずのテスト日和だ。肌寒い冬空の下で各車続々とトラックにマシンを送り込む。
基本的に大きなトラブルなく各車夕方までテストプログラムを続けることに成功しているが、トロ・ロッソだけは初日から躓いてしまった。昼前にギアボックスのトラブルに見舞われ、僅か18周の走行でこの日のプログラムは終了した。トロ・ロッソは兄弟チームであるレッドブルよりも早く新車を完成させたが、初期トラブルの発生は織り込み済みだったようだ。ファエンツァで設計・製造された最初のオリジナルマシンとなることもあり、早めに完成させ、4回のテスト全てに参加して実地でトラブルを徹底的に洗い出す計画のようだ。一方、レッドブルは風洞での時間を最大限にとる為に最初のテストをキャンセルしている。
また、比較的保守的なデザインに見えたフェラーリの新車F10が思った以上に軽快な動きを見せた。マッサも負傷の影響を感じさせないステアリング捌きで102周の長距離を走りきり、1分12秒台のタイムを叩き出した。
日本のファンにとっては最大の注目チーム、ザウバーもいいスタートを切った。
デ・ラ・ロサは久しぶりの本格的テスト参加となるが、彼もブランクを感じさせないパフォーマンスを披露。マッサから僅か0.2秒弱遅れで2番手のタイムを記録している。また、夏になって突然BMWエンジンからフェラーリエンジンへのスイッチが決まり、急遽設計変更されたC29だが、大きな初期トラブルもなく信頼性の高さを示している。翌日は可夢偉が乗るが、彼のタイムにも注目だ。
そしてこの日最大の注目を集めたシューマッハだが、彼もブランクを感じさせない素晴らしい走りを披露した。
メルセデスGPは午前中にニコ・ロズベルグ、午後にシューマッハと一日で二人を起用したが、路面コンディションの改善した午後にドライブしたシューマッハは見事にロズベルグを上回るタイムをマークしている。単純な比較は厳禁だが、彼が現役ドライバーに引けを取らないドライビングを今でも出来ることが証明された。
なお、今オフのテストタイムの比較はあまり意味がないことに注意したい。
今シーズンからレース中の給油が禁止となる為、燃料タンクが大きくなり、燃料搭載量の差がこれまで以上に増えるからだ。ベストタイム一つとっても、あるマシンは軽い燃料で出したもので、別のあるマシンは重い燃料で出したものかもしれない。燃料の搭載量によっては5秒程度のタイム差がつくこともあるので、例えば今回のテストでもクビサの出した1分15秒というタイムが遅いとは言い切れないのだ。
とは言え、ルノーR30が幸先良いスタートを切ったとはいえないだろう。
この日の結果を見る限り、フェラーリ、ザウバー、メルセデスGP、マクラーレンが上位グループ、ウィリアムズ、トロ・ロッソ、ルノーが下位グループと分類できそうだ。もちろん、翌日にはひっくり返っている可能性もある。
1位:フェリペ・マッサ(フェラーリ/F10)1:12.547(102周)
2位:ペドロ・デ・ラ・ロサ(BMWザウバー/C29)1:12.784(74周)
3位:ミハエル・シューマッハ(メルセデスGP/MGP W01)1:12.947(40周)
4位:ニコ・ロズベルグ(メルセデスGP/MGP W01)1:13.543(39周)
5位:ゲイリー・パフェット(マクラーレン/MP4-25)1:13.846(86周)
6位:ルーベンス・バリチェロ(ウィリアムズ/FW32)1:14.449(75周)
7位:セバスチャン・ブエミ(トロ・ロッソ/STR5)1:14.762(18周)
8位:ロバート・クビサ(ルノー/R30)1:15.000(69周)
(記事:
nien)
■参考情報・・・
■関連情報・・・
BMWの撤退によってカーナンバーのナンバリングの序列の扱いが不透明だったザウバーだが、2009年シーズンのBMWザウバーのコンストラクターズ・チャンピオンシップの順位が引き継がれないことが明らかになった。これによりザウバーのカーナンバーは26と27となり、小林可夢偉が26を、ペドロ・デ・ラ・ロサが27をつけることになるようだ。また、正式なエントリーチーム名は「BMWザウバー・フェラーリ」となる模様。
日本を始めいくつかのインターネット・サイトでは可夢偉がフェラーリの伝統的ナンバーの一つである27を付けることを期待している声も聞こえていたが、実現することはないようだ。可夢偉が26を付ける理由は純粋に昨シーズンの成績によるものと考えられる。
ザウバーのカーナンバーの問題は1日に開催されたF1委員会の会議で討議され、本来であれば付けられるはずだった9と10のナンバーはウィリアムズが付ける事に決まった。すでにウィリアムズはバレンシア合同テストでこの番号をマシンに掲載している。
個人的にもナンバー27を付けたフェラーリ・エンジン搭載のザウバーのマシンに可夢偉が乗り、活躍する姿を見たかった気もするが……。
いずれにしてもナンバー云々よりもザウバーの新車C29のポテンシャルの方が重要だ。1日のテストを終えた段階では素性は良さそうだ。
(記事:
nien)
ロータスの新車は12日にロンドンで発表される予定と見られているが、シェイクダウンが今週末にも行われる可能性があるようだ。シェイクダウンの場所はヴァージンと同様イギリス、シルバーストーン・サーキットになるかもしれないが、違う場所になる可能性も否定できない。いずれにしても、5日にエンジンを点火する予定で開発は進められているようだ。
フィンランドの「Turun Sanomat」紙によれば、ロータスの新車をシェイクダウンするのはテストドライバーのファイルーズ・ファウジーになる模様。場所は未定。
その後、12日にロンドンで正式な発表会が開催され、合同テストへの合流は3週目からになる模様。
3週目のヘレス、4週目のバルセロナの2回の合同テストに参加し、ファウジーが合計で2日、ヘイッキ・コバライネンとヤルノ・トゥルーリがそれぞれ3日間ずつドライブする予定という。
(記事:
nien)
メルセデスGPは1日、スペイン、バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットで新車MGP W01を発表した。新車MGP W01のカラーリングは28日にお披露目されていたが、その時のマシンはブラウンGP、BGP001だった為、本当の新車発表会はこの日となる。新車のデザインはBGP001とは大きく異なっており、単純な正常進化ではないことが明白だ。特にノーズの三次元形状、上面エッジの盛り上がりなどはBGP001から一新されている。また、サイドポッド、エンジンカバー、フロント・サスペンションなど随所に変化が見られ、革新的と評されたマクラーレンMP4-25にも引けを取らないほどの挑戦が見られる。
MGP W01の発表はガレージで行われ、この後のテストに参加するミハエル・シューマッハ、ニコ・ロズベルグも出席した。
デザインの革新は本当に至る所にまで及んでおり、BGP001とは完全に異なる。唯一BGP001からデザインが踏襲されているパーツがウィングだ。フロント・ウィング、リア・ウィングがそうだが、これらのパーツも開幕戦までの間に大幅にアップデートされる可能性が高い。
ノーズはBGP001と最も異なる部分の一つだろう。BGP001のノーズも低かったが、今回も高さはあまり変わっていない。若干ハイノーズ化されているが、他チームの新車と比べるとその変化は少ない。ところが、形状が特徴的だ。昨年のレッドブルのマシン、RB5に倣い、上面のエッジを盛り上げるフォルムを取り入れており、複雑な三次元形状になった。それだけでなく、側面にフォルムに沿ったフィンが形成され、ダミーカメラは屈折したノーズの頭頂部側面に設置されている。
また、ドライバーの頭部上方に設置されるエアボックスが変わっている。
マシンの中央のラインにステーを形成し、その上に吸気口を設ける形にしており、他チームとは完全に別の思想から設計されているようだ。通常はこの部分はドライバーの頭部を守るためにかなりの強度が要求される為、もっと厚くカーボンファイバーで覆われている。
サイドポッド自体はフェラーリF10やルノーR30と同様に比較的オーソドックスなボックス形をしているが、より後方のリアに注目してみると非常に繊細にデザインされている。
実際の競争力は今後のテスト結果を見ていかなければわからないが、少なくとも登場時のインパクトは大きく、十分に良い印象を抱かせるデザインだ。ミハエル・シューマッハ復帰を祝うには素晴らしいマシンかもしれない。
マシン写真は
こちらからご覧になれる。
(記事:
nien)
■参考情報・・・
■関連情報・・・
1日、トロ・ロッソはスペイン、バレンシアのリカルド・トルモ・サーキットのガレージで2010年用の新車STR5を発表した。昨年までのトロ・ロッソはレッドブル・テクノロジー製のマシンのコピーを使用してきたが、今シーズンからのレギュレーションではカスタマー・マシンが禁止される為、ファエンツァのファクトリーで独自に設計・製造した。独自設計のマシンはトロ・ロッソにとって初であり、彼らの開発能力が問われるシーズンとなる。
発表はガレージで簡素に行われた。レースドライバーであるセバスチャン・ブエミ、ハイメ・アルグエルスアリが参加し、メディア関係者にお披露目された後にそのままトラックでのテスト走行に入る。
完全オリジナルマシンと銘打たれたSTR5だが、実際の外観からはそれとは認めにくい。
基本的には昨年のマシン、STR4とほぼ同じに見えるからだ。明らかな違いはSTR4よりも細く尖ったノーズ位だろうか。昨シーズン後半の改良されたレッドブルのマシン、RB5のデザインからの流用もあり、掛け合わせといってもいいかもしれない。とはいっても、現時点で完全に最適化された二層ディフューザーが積み込まれており、戦闘力はSTR4よりも高くなっていることが予想される。
トロ・ロッソにとっての今後の課題は自力でSTR5をどこまで改善できるかだろう。
STR5の写真は
こちらからご覧になれる。
(記事:
nien)
■参考情報・・・
■関連情報・・・
31日にルノーはロバート・クビサのチームメイトに25歳のロシア人ドライバー、ビタリー・ペトロフを起用することを正式に発表した。ペトロフは昨シーズンのGP2でシリーズ2位につけた好成績もさることながら、推定1,500万ユーロと目される持参金の額にも注目が集まっていた。その為、カンポスでも有力候補と一人と見られていたが、最終的にルノー入りを果たした。そしてペトロフは自身がチームに持参金を持ち込むことを認め、その内訳を簡単に明かした。
当初の噂では彼のバックにはロシアの複数の企業がついている、とされていた。
彼の1,500万ユーロに及ぶ持参金は全てロシア企業から支払われるものと見られてきた。ところが、実際には少々事情が異なるようだ。ペトロフは次のように述べている。
「僕がここにいるのは父がお金を用意してくれたからなんだ。父、それにマネージャーと父の友人だ。それ以外の関係者はいないんだ。ロシアの人達も今起きていることに目を向ける必要がある。僕らはスポンサーシップの助力なしにF1に来たんだからね」
とは言え、彼の父がロシア企業の支援を確保した可能性も高く、実際の詳しい内訳は不透明だ。
シーズンが始まった時のR30にロシア企業のロゴが加わっていれば、それがペトロフの持ち込んだスポンサーと判断していいかもしれない。
また、ルノーF1チームの代表エリック・ブイユ氏は一貫してペトロフ起用の理由はお金のみではない、と主張しているが、彼は候補ドライバーの中にはペトロフの倍額の持参金を持つものがいたことも明かしている。ブイユ氏は次のように語っている。
「我々はビタリーの倍額を持ち込めるドライバー達とも交渉していたんだ」
ただし、ブイユ氏が真実を語っているかどうかはわからない。ペトロフの1,500万ユーロが事実であれば、恐らく今ストーブリーグで最も高額の持参金になるからだ。それ以上の額を持っているドライバーがゴロゴロ転がっているようならば、カンポスやUSF1も苦労しないだろう。ただし、ペトロフの持ち込んだ額が実際にはもっと下だった可能性もある。それならば、より高額の持参金を持つドライバーもいたのかもしれない。
なお、ペトロフとルノーの契約は2010年末までの1年間プラス、2年間のオプション付きと推測されている。
現時点ではペトロフはペイドライバーの一人だが、実際にシーズンが始まって活躍すればそのレッテルはすぐに忘れ去られるだろう。周囲に実力ある新人と納得させるためにも2010年シーズンは彼のキャリアにおいて最も重要な一年になるだろう。
(記事:
nien)