2010年1月30日のニュース
毎年新車が発表される時期になると、各チーム関係者は他チームのマシンの合法性について疑問を示すのが常だが、今年も同様で、早くもフェラーリから問題提起があった。彼らが気にしているポイントは昨年同様ディフューザーだ。フェラーリのテクニカル・ディレクター、アルド・コスタ氏はレギュレーションにおけるディフューザーの解釈に明確性がないと唱えており、すでに1チームのマシンのディフューザーが合法かどうか怪しいと指摘している。
現時点で新車が明らかになっているのはフェラーリ、マクラーレン、ウィリアムズの3チーム。それ以外のチームの新車はまだベールに包まれている。加えて、どのチームもマシン後部は厳重に隠しており、ディフューザーがどのようなデザインになっているのかわからない。ディフューザーの違法性を論じるにはまだ材料が足りていない状況だ。
ところが、コスタ氏はすでに違法デザインの可能性を懸念している。イタリアのスポーツ紙「La Gazzetta dello Sport」紙に対して次のように述べている。
「昨年の我々はとても不愉快な立場にあったが、今でも二層ディフューザーは違法だと思っている。これからも騒動がおきるかもしれない」
そしてコスタ氏は少なくとも1チームのマシンのリアの設計がレギュレーションすれすれにあると自身の考えを明かした。彼が指摘しているマシンがどのチームのものかはわからないが、マクラーレンである可能性も十分にある。マクラーレンは全体的に革新的デザインを採っており、すでに評判は上々だ。フェラーリF10と比べるとより先進的と感じることには多くの人が同意するはずだ。噂ではマクラーレンは二層ではなく三層や四層といった多層ディフューザーを採用しているのではないか、とも言われている。
マクラーレンのエンジニアリング・ディレクター、パディ・ロウ氏は次のように述べている。
「我々は二層ディフューザーをかなり大きく変化させた。ライバル達もとても極端なソリューションを準備していると思うよ。ただ、我々は解釈はとても明確だと思っている。ある点についてFIAにたずねたところ、彼らもとても明確な解釈を示してくれた」
しかし、フェラーリのチーフ・デザイナー、ニコラス・トムバジズ氏も懸念を示している。
「二層ディフューザーの開発には多くの余地が残されているからね。心配している」
ディフューザーの解釈でフェラーリが遅れを取っていた場合、彼らは提訴するかもしれない。となると、昨年同様序盤戦のレース結果は一旦は暫定扱いとなるかもしれない。コスタ氏、トムバジズ氏とロウ氏の発言を比較するだけでも、すでにフェラーリがマクラーレンに遅れを取って焦っている印象を受ける。今年のフェラーリも苦戦するかもしれない。
とは言え、まだテストも行われていないうちから勢力図を占うのも時期尚早だろう。
まずは来週のテストを楽しみにしたい。
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nien)
ニック・ハイドフェルドの去就に関する噂が一転二転してよくわからない状況が続いている。29日にメルセデスGPのテスト&リザーブドライバーに就任する事が発表される、と報じられたかと思えば直後にメルセデス・モータースポーツ副社長ノルベルト・ハウグ氏からの否定のコメントが出された。また、彼にはドイツ・ツーリングカー選手権(DTM)参戦の噂まで出てきている。
まず最近の噂をハウグ氏は否定した。彼はドイツの「Bild」紙が報じたハイドフェルド加入の話をDPA通信に対して否定のコメントをしている。そしてハウグ氏はSID通信に対してこうも語っている。
「まだ検討中で何も決まっていない」
ハウグ氏は10日以内には発表されるだろう、と見解を示しているが、ハイドフェルドにはマクラーレン入りの噂もある。そして理論上はルノー、カンポス、USF1のレースシートも空いている。最近はレースシート獲得の噂は消えつつあるが、どうなるかはわからない。
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nien)
ヴァージン・レーシングの新車発表会の概要が明らかになった。ヴァージンは2月3日午前10時から新車VR-01(仮)をチーム公式サイトで発表する。当初はフェラーリやマクラーレンのようにチーム首脳陣、ドライバーを出席させ、メディア関係者を呼んでの一般的な発表会を開催するものと見られていたが、バーチャルイベントに切り替えたようだ。バーチャルな発表会は以前にトヨタF1チームも採用している。
発表会の開催を取りやめ、バーチャルイベントに変えた理由はコスト削減だと考えられるが、あくまでも推測に過ぎない。実際の理由は不明だ。
とりあえず彼らはチーム公式サイトで発表する道を選んだ。
2月3日といえば、既存チームの多くはすでに新車を公表済みであり、ヴァージンの新車への注目も十分に集まるだろう。ヴァージンの新車はニック・ワース率いるワース・リサーチ社によって開発されており、CFDのみで設計が進められている。他チームと異なり風洞を使っていないため、競争力は全く未知数だ。
ティモ・グロック、ルーカス・ディ・グラッシというまずまずのドライバー・ラインナップも採用できており、ヴァージンの体制はロータスと並んで4つの新規参戦チームの中では抜けている。彼らのマシンがどの程度のポテンシャルを秘めているのか、登場を楽しみに待ちたい。
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nien)
29日に新車MP4-25を発表したマクラーレンのチーム代表マーティン・ウィットマーシュ氏が、財政難に陥っている新規チームに関してプロジェクトのやり方に疑問を投げかけている。ウィットマーシュ氏は、全てをゼロから用意せずに、撤退したトヨタの資産を有効に活用すべきだったのではないか? との考えを明かした。そして財政難に喘ぐカンポスやUSF1がその道を選ばず、参戦権を持っていないステファンGPがウィットマーシュ氏の考えと同じ道を選んだのも皮肉な話だ。
トヨタは撤退を決めた時期が遅かったため、2010年向けの新車TF110をほぼ完成させていた。
実際、昨年末のクリスマスの時期にはほぼ完成しており、実走させられるレベルに近付いていたと見られている。そして、ステファンGPは真っ先に飛びついた。ステファンGPは参戦権こそ持っていないものの、TF110の知財とケルンのファクトリーの施設のリース契約を取り付けようとしている。すでに基本的に合意に至ったことが正式に発表されており、彼らの準備は着々と進んでいる。
一方、ゼロからチームを立ち上げようとしているカンポス、USF1の状況は厳しい。
特にカンポスは危機的状況にあり、A1GPのボス、トニー・テシェーラ氏によるチーム株式の一部売却が実現しない限り開幕戦にマシンを用意することすら困難との噂もある。このような状況に陥る可能性はエントリーを認められた昨年春の時期から予想されており、ウィットマーシュ氏としてはTF110を手に入れるチャンスが訪れた時に飛びつかなかったことが理解できないようだ。
ウィットマーシュ氏は次のように述べている。
「マクラーレンとしてはF1参戦者は独自にマシンを開発する事が重要と考えている。しかし、我々は現実主義者であり、過去にカスタマーカーを供給する計画もあった。その意思は今でも残っている。ただし、今からでは他チームが要求してもバーレーンまでに準備できるかはわからない。皮肉な事だが、新規参戦チームはトヨタのシャシーを手に入れるチャンスがあったんだ。トヨタはクリスマスから利用できる2台のマシンを作っていた。それなのに彼らの一部がそれを手に入れようとしなかったことに驚いている。彼らはせっかくの贈り物に文句さえ言っていたようだ。私はその選択は間違っていたと思う。もちろん彼らには何か理由があったのかもしれないがね」
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nien)
今シーズン、もしくは来シーズンからのF1参戦を目指しているセルビアのチーム、ステファンGPがトヨタ・モータースポーツGmbH(TMG)と技術支援に関して基本合意に至ったことを発表した。詳細は後日プレスリリースで発表される予定だが、契約が完全に締結されればトヨタが2010年シーズンに向けて設計・製造していた新車TF110のデータ及びマシンをステファンGPが使用できるようになる予定だ。また、ケルンのファクトリーにあるトヨタの施設の一部をリースで使用することになると予想されている。
ステファンGPは参戦権を持っていない為、現状であれば今シーズンどころか来シーズンのF1にも参戦できない。
しかし、すでに周知の事実と化したカンポスの財政難の問題がある。カンポスが今シーズンの開幕戦を迎えることなくプロジェクトをストップさせる可能性は未だに懸念されており、実際に彼らの問題について2月1日のF1委員会で話し合われる予定になっている。話し合い次第ではデッドラインが設定され、それまでに予算確保ができなかった場合には参戦権を剥奪される可能性もある。そうなった場合、ステファンGPは駆け込み参戦できるかもしれない。
また、仮にカンポスが参戦できたとしてもシーズン最終戦までグリッドにマシンを並べられるかどうかも不安視されている。大方の予想ではカンポス、そしてUSF1はシーズン最終戦を迎えられないだろう、と考えられており、ステファンGPが遅くとも来シーズンから参戦できる可能性は十分にある。
特に新規でマシンを用意する道を撰ばなかっただけにステファンGPの準備状況はカンポスやUSF1を上回っている。
話によればステファンGPは2月のテストにも間に合わせることができる状況にあるようだ。カンポスは一度もテストを行わない予定とも言われており、その差は明らかだ。ドライバー・ラインナップに関しても未だに不透明な状況にあるカンポスと異なり、ステファンGPは中嶋一貴をはじめ、スムースに決まりそうだ。
チームは29日、今後もF1参戦のための努力を続ける、と発表した。
彼らは声明の中で次のように述べている。
「ステファンGPはトヨタモータースポーツGmbH(TMG)からの技術支援を受けることでTMGと基本的な合意に達した。詳細は追ってプレスリリースで発表する」
参戦権がありながら準備が遅れているカンポス、参戦権がないものの準備が進んでいるステファンGP、最終的にどちらのチームが開幕戦にマシンを並べることができるのか、いよいよ最終局面に入りつつある。
ちなみにステファンGPは公式サイトを開設し、ニュースをリリースしているがカンポスはサイトこそ開設しているものの、更新は中断されており、情報は何もアップされていない。欧州のメディアが彼らの参戦を懸念するのも当然かもしれない。
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nien)
マクラーレンは29日、イギリス、ニューベリーにあるチームのタイトルスポンサーを務めるボーダフォンの本社で新車MP4-25の発表会を開催した。発表会にはルイス・ハミルトン、ジェンソン・バトン、チーム首脳陣が出席し、メディア関係者も参加した。また、フェラーリ同様発表会の模様をインターネットで生中継。フェラーリは世界中から約300万のアクセスが集中し、中継を見られないファンが多かったが、マクラーレンは回線の混雑こそ見られたが、特に大きなトラブルは発生しなかったようだ。
新車MP4-25の写真は[[こちらから]]ご覧になれる。
前日に発表されたフェラーリの新車F10がオーソドックスなスタイルを採用したのに比べるとMP4-25は野心的だ。昨年のレッドブルのマシン、RB5から良い所を盗んでいるのもF10と同様だが、オリジナルなアイデアも沢山盛り込まれている。フロント・ウィングのエレメントは多数設置され、また複雑なフォルムをしている。ノーズ高はフェラーリ同様、こちらも目一杯高くもってきている。また、ダミーカメラもフェラーリ同様、ウィング・ステー途中にまるでエレメントのような形で取り付けられている。パッと見はもはやウィングだ。
フロント・サスペンションも角度が大きく取られ、空力が重視される設計になっている。
面白いのがブレーキダクトで、フェラーリは一見すると見えにくい位置にあるが、マクラーレンは上部にもってきた。フェラーリは上部には小型ウィングのような形状のパーツを形成し、下にダクトを設置しているが、マクラーレンはダクトを空力パーツと兼ねた格好になっている。当然ダクトに取り込まれるエアはフェラーリがフロントウィング下部から流れる者であるのに対して、マクラーレンは上面から流れるエアになる。どちらがいいかはまだわからない。今シーズンは給油禁止になることで搭載燃料が大幅に増える。それによってブレーキに非常に厳しくなるため、ブレーキダクトの設計はこれまで以上に大切になる。ここは恐らく今シーズンの開発ポイントの一つになるだろう。
そして特徴的なのがサイドポッドだ。外観としては昨年のレッドブルのマシンと似ていて、後方に向けて大きく沈み込んでいる。また、ラジエーター開口部が非常に小さい。これは明らかにメルセデス・ベンツ・エンジンの恩恵だろう。メルセデス・ベンツ・エンジンは冷却性能に長けており、冷却のためのエアの要求が少ないと言われている。
リアもMP4-25は特徴的だ。こちらもレッドブルに倣い、シャークフィンとリア・ウィングを一体化させている。フィンを長く伸ばし、ウィング中央部と結合させる形だ。ウィングのステーは左右2本ではなく、中央に1本の方式を採用している。もちろん空力を考えドラッグが大幅に減る。
結果的にこのマシンの競争力が高いかどうかはまだわからないが、少なくともフェラーリF10よりは先進的に見える。昨年のマクラーレンは冬のテスト開始時からリアのダウンフォース不足で躓いたが、今年はまずまず良い発進をしそうだ。来週のテストを楽しみにしたい。
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